2008年 02月 05日
少年の日の思い出
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ン十年ぶりに読みました。
ヘルマン・ヘッセの短編「少年の日の思い出」。
コレ、読みたかったのよ(T_T)
中学の教科書で初めて読んだ時、
まだヘッセなんて未体験だった思春期の心に、
何とも言いようのない痛みを感じた物語。
頭の中のどこかにずーっとあったその物語を、また読んでみたくなって、
ふらりと本屋さんなどを探してみたけれど見つからず。
図書館で探すのも億劫で、そのままになってました。
それが、15年ほど前のこと。
で、お正月に「デミアン」を読み返してみたのをきっかけに、
またモーレツに読みたくなって、いざ検索!
そうそう、今はパソがあるんですね〜。
世の中ホントに便利になったものデス。
昔、見つからなかったのも当たり前。
ヘッセの全集にしか載っていなかったのでした。
そして!今も中学1年で採用してる教科書があるのね〜。
ううっ…そこには全く思い至らなかったワタクシ。
近所の中学生に頼んでみようかとも思ったのだけど、まずは図書館に…
ということで、全集発見!
やっと会えたっ(T^T)
手にした時は嬉しかった!
友人の、大事な(標本の)蝶を盗み出し、
誤って壊してしまった、幼い日の苦い記憶。
大ざっぱな内容しか覚えてなかったけれど、うん、確かにこの話。
何だかね、ながーいこと行方知れずだった懐かしいぬいぐるみが
ひょっこり出て来てくれたみたいで、じんわり来るものがありました。
・・・・・・・・・・
とにかく、あらゆる点で、模範少年だった。そのため、ぼくはねた
み、嘆賞しながら彼をにくんでいた。
この少年にコムラサキを見せた。彼は専門家らしくそれを鑑定し、
その珍しいことを認め二十ペニヒぐらいの現金の値打ちはある、と
値ぶみした。しかしそれから、彼はなんくせをつけ始め、展翅の仕
方が悪いとか (略) もっともな欠陥を発見した。ぼくはその欠
点をたいしたものとは考えなかったが、こっぴどい批評家のため、
自分の蝶に対する喜びはかなり傷つけられた。それでぼくは二度と
彼に獲物を見せなかった。
・・・・・・・・・・
うーん…こんな部分があったのか。まるで覚えてない。
でも、今読むとまた感じ入るものがある。
彼は、相手にそんな想いを持ってたんだね。
蝶を盗んで壊した後悔っていう印象が強かったのに、
友人に対してのそんな小さな闇が絡んでいたのだと。
教科書に載っている「少年の日の思い出」は、
1911年の「クジャクヤママユ(Das Nachtpfauenauge)」を
改稿したものらしいです。
Nachtpfauenaugeは、文字通り訳すと「夜の孔雀の目」だとか。
孔雀の目って、あの、目のような模様のことも言ってるんでしょうね。
彼の心の中に、蝶のその「目」に全てを見られていた、
なんていう意味もあるのかなと想像したりして、またひと味違う読後感。
バラバラになった蝶の羽根の色、
手のひらに付いた鱗粉、
友人の部屋の匂い、
一生忘れられないんだろうなぁ…。
大人だって大差ないけれど、子供時代は特にそうだよね。
自分自身に付けた傷は、小さくても鋭くて深い。
・・・・・・・・・・
ぼくは彼にぼくのおもちゃをみんなやると言った。(略)しかし彼は、
『結構だよ。ぼくは君の集めたやつはもう知っている。そのうえ、き
ょうまた、君がチョウをどんなに取り扱っているか、ということを見
ることができたさ』と言った。
その瞬間、ぼくはすんでのところであいつののどぶえに飛びかかる
ところだった。もうどうにもしようがなかった。ぼくは悪漢だという
ことにきまってしまい、エーミールはまるで世界のおきてを代表でも
するかのように、冷然と、正義をたてに、あなどるように、ぼくの前
に立っていた。彼はののしりさえしなかった。ただぼくをながめて、
けいべつしていた。
・・・・・・・・・・
この、冷たい閉塞感がとても印象深い。
そして、次は母として印象深く、そうありたいと思う。
・・・・・・・・・・
母は驚き悲しんだが、すでにこの告白が、どんな罰をしのぶことより、
ぼくにとって、つらいことだったということを感じたらしかった。
(1シーン略)
母が根ほり葉ほり聞こうとしないで、ぼくにキスだけして、かまわず
においてくれたことをうれしく思った。
・・・・・・・・・・
勉強は好きじゃなかったから、授業は記憶にないのだけれど^^
ただ、その「動かされた」気持ちを何とかしたくて、
物語を、数ページの漫画にしたのを憶えてる。
今思い出すと、アゲハの絵を描いてたような…。
整合性への頓着など一切なし。
蝶=アゲハだった稚拙な自分もまた、こそばゆく懐かい。
あの漫画、どこに行っちゃったんだろなぁ…。
何はともあれ、読むことができてホントに嬉しかった。
あと20年くらいして読んだら、
また違った印象になるんでしょうね。
by ashi-bann
| 2008-02-05 23:50
| 本もすき
|
Comments(6)
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もりぃ
at 2008-02-07 11:18
x
こんにちは。懐かしいですねー、ヘッセ。このお話はなんとなくおぼえているような気がします。やはり教科書だったのかしら。他には車輪の下と知と愛ぐらいしか読んでいませんが、その内容も今やおぼろげです。
小説は読む年令によって感じ方が変わってきますよね。「母として印象深い」というのも納得、きっとむかしは感じなかった部分でしょうね。私も図書館に行って久しぶりになにか読んでみようかしら。
風景の写真がとてもきれい。
小説は読む年令によって感じ方が変わってきますよね。「母として印象深い」というのも納得、きっとむかしは感じなかった部分でしょうね。私も図書館に行って久しぶりになにか読んでみようかしら。
風景の写真がとてもきれい。
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アコちゃん
at 2008-02-07 12:01
x
私もヘッセ好きだったわ・・・
私たちの時代、教科書には載っていませんでしたが、中学校の時読んだ「車輪の下」が最初でした。
そして、「デミアン」・・・ そして、デミアンに登場したアブラクサス・・・そして、「アブラクサス」というサンタナのアルバム♪を聴いて・・・少しずつ世界が広がっていったよね・・・
私たちの時代、教科書には載っていませんでしたが、中学校の時読んだ「車輪の下」が最初でした。
そして、「デミアン」・・・ そして、デミアンに登場したアブラクサス・・・そして、「アブラクサス」というサンタナのアルバム♪を聴いて・・・少しずつ世界が広がっていったよね・・・
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ashi-bann at 2008-02-07 23:04
もりぃさん、こんばんは!
ひゃん〜憶えてらっしゃいます?普通にはあまり出回っていないと思うので、
もし読まれたんでしたら教科書かもしれませんねー♪
私も学生の時に「車輪の下」と「知と愛」は読んだ「はず」なんですけれど、
うーん…細かいトコが思い出せない…ちゃんと読んだのかなぁ(__;)
最近、昔読んだ本を読み返したり、映画を観なおしたりしてみています。
いろんな発見がありますねぇ。楽しい♪
ひゃん〜憶えてらっしゃいます?普通にはあまり出回っていないと思うので、
もし読まれたんでしたら教科書かもしれませんねー♪
私も学生の時に「車輪の下」と「知と愛」は読んだ「はず」なんですけれど、
うーん…細かいトコが思い出せない…ちゃんと読んだのかなぁ(__;)
最近、昔読んだ本を読み返したり、映画を観なおしたりしてみています。
いろんな発見がありますねぇ。楽しい♪
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ashi-bann at 2008-02-07 23:53
アコちゃん、こんばんは!
みんな一度は通るヘッセの道^^
油くさす!←うはは…変換したらこんなのが出てきちゃったよ(>▽<)
そうそう、お正月に読み返して一番頭に残ったのがアブラクサスのくだり。
そうか、こうゆーことを言ってたんだと頷きながら読んでました。
で、サンタナの名前を久々に見て、YouTubeに行ってみました^^
今もパソのBGMで流れてます。
みんな一度は通るヘッセの道^^
油くさす!←うはは…変換したらこんなのが出てきちゃったよ(>▽<)
そうそう、お正月に読み返して一番頭に残ったのがアブラクサスのくだり。
そうか、こうゆーことを言ってたんだと頷きながら読んでました。
で、サンタナの名前を久々に見て、YouTubeに行ってみました^^
今もパソのBGMで流れてます。
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yusyusyo at 2008-02-08 13:12
あしねえさん こんにちは。
ワタシもこのお話、なんとなく記憶の片隅に…。
大人になって読んでみると、別の痛みというか、重みというか。
ずしーん、とくるものがありますね。
またねえさんの解説&感想も、染み入ります。
そんでまたこれ読んで、漫画をかいてしまうとは、なんと感受性豊かなお子様時代だったのでしょう。
さすが、という感じですよ~。
名作、といわれるものは幾つの時に読んでも、それぞれに何かを与えてくれるものなのですね。
な~んて、わかったようなことをいってますが…
こんな栄養をもらいつつ、素敵に歳を重ねていきたいもんです。
ワタシもこのお話、なんとなく記憶の片隅に…。
大人になって読んでみると、別の痛みというか、重みというか。
ずしーん、とくるものがありますね。
またねえさんの解説&感想も、染み入ります。
そんでまたこれ読んで、漫画をかいてしまうとは、なんと感受性豊かなお子様時代だったのでしょう。
さすが、という感じですよ~。
名作、といわれるものは幾つの時に読んでも、それぞれに何かを与えてくれるものなのですね。
な~んて、わかったようなことをいってますが…
こんな栄養をもらいつつ、素敵に歳を重ねていきたいもんです。
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ashi-bann at 2008-02-09 00:05
うすちゃん、こんばんは!
うすちゃんも教科書組かな?けっこう長いこと採用されているみたいです。
漫画にしちゃったのは、きっとまともな感想を考えられなくて、でも何か
表現したくてやっちまったんだと思いマス。実は昔は文章を書くのが
すごーく苦手だったのです。感想文の宿題とかって嫌いだったぁ〜^^
今も紙に書くとわかんなくなっちゃうので、パソさまさまです。
最近、名作と呼ばれてるものをようやく観たり読んだりしてます。
やっぱそう言われるだけのことあるのねと、今更頷く私であった^^
うすちゃんも教科書組かな?けっこう長いこと採用されているみたいです。
漫画にしちゃったのは、きっとまともな感想を考えられなくて、でも何か
表現したくてやっちまったんだと思いマス。実は昔は文章を書くのが
すごーく苦手だったのです。感想文の宿題とかって嫌いだったぁ〜^^
今も紙に書くとわかんなくなっちゃうので、パソさまさまです。
最近、名作と呼ばれてるものをようやく観たり読んだりしてます。
やっぱそう言われるだけのことあるのねと、今更頷く私であった^^