2012年 08月 24日
駅
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仕事で、都内のある駅に降り立った。
10年以上前、
今は亡き父が倒れたとき、運び込まれた救急病院がある場所。
毎日のようにひとり電車に乗り、
生死を彷徨う父に会いに行く。
夜、その駅のホームで帰りの電車を待つあいだ、
ぼんやりと見ていたビルの看板や商店街の灯。
世界に、ひとりぼっちになったように心を塞いで立っていた。
2ヶ月ほどして、命をとりとめ転院が決まったとき、
それからの不安を閉じ込めながら、
ここにはもう2度と来ることはないのだろうと、
そう思って見渡した駅舎。
その駅に、また降り立つことになって、
同じように夜の駅舎にひとり立って、
きっと、ほとんど変わらない風景なのだろうけれど、
私の眼に映る空気はまるで違うもののよう。
想像していたほどの懐かしさも、
寂しい記憶に胸が痛くなることもない。
ただ、ほんの小さな何かが、ふわりと内側をよぎる。
あのときのICU。
息子さんを想い、廊下で泣いていたご夫婦はどうしているだろう。
ご主人の状況を公衆電話で伝えたあと、
じっと動かなかった若い奥さんはどうしているだろう。
あの頃、気持ちの支えになっていた子どもたちのちっちゃな手は、
もう私の手のひらよりも大きくなっている。
by ashi-bann
| 2012-08-24 00:14
| 日記だかエッセイだか
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